店舗の間接照明や什器照明、サインの内照などでLEDテープを多数並べる現場では、「どの回路から取るか」「ブレーカーは何Aにするか」「専用回路に分けるか」の判断が施工品質と安全を左右します。容量計算を飛ばして既設のコンセント回路に電源をぶら下げると、投入時に突入電流でブレーカーが落ちる・他負荷の起動でちらつくといったトラブルになります。本記事では、LEDテープ照明の1次側(AC側)の負荷電流の計算式、連続負荷80%ルール、突入電流による電源台数制限、そして回路分けの判断基準を施工業者向けに整理します。
現場あるある: 「テープと電源は容量どおりなのに、朝の点灯で漏電・配線用遮断器が落ちる」。原因の多くは1次側の容量不足ではなく、複数電源の突入電流の合算です。DC側のW計算だけで回路を決めると見落とします。
なぜ専用回路・容量設計が必要か
LEDテープ自体はDC12V/24Vの低電圧ですが、それを動かすスイッチング電源(ドライバ)はAC100V/200Vの分電盤側につながります。設計の対象は、このAC側の回路です。容量を考えずに既設回路へ集約すると、次の3つが起こります。
- 突入電流でのトリップ: スイッチング電源は投入の瞬間、定常電流の数十倍に達する突入電流(インラッシュ)が流れます。複数台を同時投入するとこれが合算し、配線用遮断器の瞬時引き外し域や漏電遮断器を叩いて落ちます。
- 電圧変動によるちらつき: 同一回路にエアコンや厨房機器などの大きな起動負荷があると、起動時の電圧降下でLEDが一瞬暗くなる・明滅することがあります。
- 過負荷・発熱: 連続点灯の照明は「連続負荷」です。回路容量ぎりぎりまで詰めると、電線・端子が温まり続け、劣化やトリップの原因になります。
前提: 分電盤からの回路増設・変更、専用回路の新設は電気工事士の有資格作業です。本記事は容量設計の考え方の解説で、実際の結線は資格者が内線規程・電気設備技術基準に従って行ってください。資格区分はLEDテープ施工に必要な電気工事士資格を参照。
1次側(AC側)入力電流の計算式
回路に何をどれだけ載せられるかは、テープのDC消費電力ではなく電源の1次側(AC側)入力電流で判断します。手順は「DC負荷W → 入力W → 入力電流A」の順です。
① DC負荷電力を拾い出す
テープのW/m × 総延長がDC側の消費電力です。W/m(ワット密度)の選び方のとおり、密度・色で大きく変わります。
② 電源効率で入力電力に換算する
スイッチング電源には変換ロスがあり、効率η(おおむね0.85前後)で割って1次側入力電力を求めます。
入力電力[W] = DC負荷[W] ÷ 電源効率η(≈0.85)
③ 電圧と力率で入力電流に換算する
力率PFは、PFC(力率改善回路)付きで0.9以上、なしの小型アダプタで0.5〜0.6程度です。
入力電流[A] = 入力電力[W] ÷ ( AC電圧[V] × 力率PF )
計算例: 24V・14.4W/mのテープを5m×4本(DC計288W)動かす場合。
入力電力 = 288 ÷ 0.85 ≈ 339W。AC100V・力率0.9なら入力電流 = 339 ÷ (100×0.9) ≈ 3.8A。連続容量だけ見れば20A回路にも余裕で載りますが、台数は後述の突入電流で決まります。力率の詳細は力率(PFC)ガイドを参照。
連続負荷80%ルールとブレーカー容量
照明は長時間連続して点灯する連続負荷です。連続負荷はブレーカー(および電線)の定格の80%以内で使うのが設計の原則。ブレーカー容量から実用上限を逆算すると次のとおりです。
| 分岐ブレーカー | 連続使用の上限電流(80%) | AC100V時の上限 | AC200V時の上限 |
|---|---|---|---|
| 15A | 12A | 約1,200VA | 約2,400VA |
| 20A | 16A | 約1,600VA | 約3,200VA |
| 30A | 24A | 約2,400VA | 約4,800VA |
※VAは皮相電力の目安。実際の許容は電線の太さ・こう長による電圧降下も含めて決めます。配線サイズは電線の太さ(sq)選定を参照。
ブレーカーだけ大きくしない: 落ちるからと容量の大きいブレーカーに替えるのは厳禁です。ブレーカーは後ろの電線を保護する装置で、容量は電線の許容電流に合わせて決まっています。電線そのままで容量を上げると、過電流時に電線が先に発熱して危険です。
突入電流で電源台数を制限する
連続容量に余裕があっても、回路に載せられる電源台数は突入電流の合算で頭打ちになります。スイッチング電源は投入時に入力コンデンサを充電するため、数十A・数百μs〜数msの突入電流が流れます。これが複数台同時に重なると、配線用遮断器の瞬時引き外しや漏電遮断器を作動させます。対策は次のとおりです。
- 突入電流抑制機能付きの電源を選ぶ: NTCサーミスタやアクティブ抑制回路で突入を低減した電源を選定する。
- 台数を複数回路に分散する: 1回路に集約せず、系統を分けて同時投入の合算を下げる。
- 遅延形(時延形)の遮断特性を使う: 突入のような短時間の大電流では落ちにくい特性の機器を、保護協調を崩さない範囲で選定する。
- 投入タイミングをずらす: タイマー・リレーで系統ごとに時間差点灯にし、突入のピークを重ねない。
関連トラブル: すでに落ちている場合の切り分けは突入電流でブレーカーが落ちる原因と対策、漏電側は漏電ブレーカーが落ちる原因を参照してください。
W/m×長さ別 1次側入力電流の早見表
AC100V・電源効率0.85・力率0.9で換算した、テープ1本(5m)あたりの目安入力電流です。回路の連続容量(20A回路=16A)に対する積み上げの目安に使えます。
| テープ密度の目安 | DC負荷(5m) | 入力電力(÷0.85) | 入力電流(100V) | 16A回路への目安本数* |
|---|---|---|---|---|
| 4.8W/m(弱め間接) | 24W | 約28W | 約0.31A | 容量上は多数/突入で制限 |
| 9.6W/m(標準間接) | 48W | 約56W | 約0.63A | 容量上は多数/突入で制限 |
| 14.4W/m(明るめ) | 72W | 約85W | 約0.94A | 連続では十数本可/突入で制限 |
| 19.2W/m(高出力) | 96W | 約113W | 約1.25A | 連続で約12本/突入で制限 |
| 24W/m(高密度・看板内照) | 120W | 約141W | 約1.57A | 連続で約10本/突入で制限 |
*連続容量(16A)のみで割った理論値。実際は突入電流の合算が先に上限となるため、突入抑制のない電源では1回路あたり数台〜十数台に分散します。電源効率・力率は製品で異なるため、必ず採用品の仕様値で再計算してください。
回路分け(専用回路)の判断基準
専用回路・容量設計の手順
手順① DC負荷を拾い出す
- 系統ごとに
W/m × 総延長でDC消費電力を集計する。 - 同時に点灯する範囲(調光グループ)を把握し、最大同時負荷を求める。
手順② 入力電流に換算する
- 採用電源の効率ηと力率PFを仕様書で確認する。
入力電流 = (DC負荷 ÷ η) ÷ (AC電圧 × PF)で系統ごとに算出する。
手順③ 80%ルールでブレーカーを選ぶ
- 合計入力電流が分岐ブレーカー定格の80%以内に収まる容量を選ぶ。
- 電線の許容電流とこう長による電圧降下も合わせて確認する(電線太さガイド)。
手順④ 突入電流で台数・系統を決める
- 突入電流抑制機能の有無を確認し、1回路あたりの同時投入台数を制限する。
- 必要に応じて系統を複数回路に分け、時間差投入で突入を分散する。
手順⑤ 専用回路化と保護協調
- 規模・調光・常時点灯の条件に該当する系統は専用回路で分ける。
- 漏電遮断器の感度・配線用遮断器の特性を保護協調が崩れない範囲で選定する(資格者作業)。
回路設計チェックリスト
- 系統ごとにDC負荷(W/m×延長)を拾い出した
- 採用電源の効率η・力率PFを仕様書で確認した
- 入力電流を「÷η ÷(V×PF)」で算出した
- 合計入力電流をブレーカー定格の80%以内に収めた
- 電線の許容電流・こう長の電圧降下を確認した
- 電源の突入電流抑制機能の有無を確認した
- 1回路の同時投入台数を突入電流で制限した
- 中規模以上・調光・常時点灯系は専用回路に分けた
- ブレーカー容量だけを安易に上げていない
- 回路の増設・変更を有資格者が行う計画になっている
まとめ — 容量と突入の両面で決める
- 判断はAC側の入力電流で: DCのWを効率と力率で1次側に換算し、ブレーカー定格の80%以内に収める。
- 台数は突入電流で頭打ち: 連続容量に余裕があっても、同時投入の突入合算で1回路の台数は制限される。抑制付き電源・系統分散・時間差投入で対応。
- 規模・調光・常時点灯は専用回路: 相互影響と過負荷を避け、回路の増設・変更は必ず有資格者が行う。