LED電源を選ぶとき、容量(W)とDC電圧(12V/24V)は誰でも確認しますが、見落とされがちなのが力率(PF:Power Factor)です。力率の低い電源は、同じW数でも一次側(AC100V側)に流れる入力電流が大きくなります。1回路に複数台の電源をまとめて接続する大規模物件や多灯サインでは、力率を無視すると合計電流がブレーカー定格を超え、「電源は容量内なのにブレーカーが落ちる」という現象が起きます。このページでは、力率の意味、入力電流の計算式、PFCの有無による違い、回路あたりの接続台数の決め方を施工業者向けに整理します。
1. 力率(PF)とは何か
力率とは、電源が交流(AC)から受け取る電力のうち、どれだけが実際の仕事(有効電力)に使われているかを表す比率です。0〜1の値で示され、1に近いほど効率よく電流を使えていることになります。
// PF=1.0 … 理想(電流のムダなし)
// PF=0.5 … 同じWでも電流が2倍必要になる
スイッチング電源は内部で交流を直流に変換する際、入力電流の波形が歪み、電圧と電流のタイミングがずれます。このずれによって、実際に消費するW数以上の電流(皮相電力)を引き込んでしまうのが、力率が1未満になる理由です。
力率は「電気代」ではなく「電流の太さ」の話: 一般家庭の電気料金は有効電力(W・kWh)で課金されるため、力率が低くても電気代が直接増えるわけではありません。施工業者にとって力率が重要なのは、同じW数でも入力電流(A)が変わり、ブレーカー・幹線・配線の設計に直結するからです。
2. なぜ施工業者に力率が関係するのか
現場で力率が効いてくる典型的な場面は次の3つです。
- 多灯・大規模物件:間接照明や大型サインで電源を1回路にまとめると、入力電流の合計がブレーカー定格に迫る
- 既設回路への増設:すでに他の負荷が乗っている回路に追加するとき、入力電流の余裕が読めないと過電流トリップする
- 幹線・分電盤の容量計算:設計段階で力率を見込まないと、電流計算が過小評価になり配線サイズを誤る
「W数は足りているのに落ちる」の正体: ブレーカーは電流(A)で動作します。電源の容量(W)が回路の許容範囲内でも、力率が低くて入力電流が大きいと、電流ベースではオーバーしてトリップします。容量計算を「W」だけで済ませず、「A」に換算して確認するのが鉄則です。
3. 入力電流の計算式と力率別早見表
AC100Vでの入力電流は、次の式で概算できます。電源自体の変換効率(一般に85〜92%)も厳密には影響しますが、現場の見積もりでは下式で十分です。
// 例:100W / (100V × 0.95) ≒ 1.05A
// 例:100W / (100V × 0.50) ≒ 2.00A(同じ100Wでも約2倍)
下表は、AC100Vで使う各容量の電源について、力率ごとの入力電流の目安です。同じW数でも、力率が下がると入力電流が跳ね上がるのが分かります。
| 電源容量 | PF 0.95(アクティブPFC) | PF 0.70(パッシブPFC) | PF 0.50(PFCなし) |
|---|---|---|---|
| 60W | 約0.63A | 約0.86A | 約1.20A |
| 100W | 約1.05A | 約1.43A | 約2.00A |
| 150W | 約1.58A | 約2.14A | 約3.00A |
| 200W | 約2.11A | 約2.86A | 約4.00A |
| 300W | 約3.16A | 約4.29A | 約6.00A |
4. PFCあり・なしの違い(アクティブ/パッシブ)
PFC(Power Factor Correction=力率改善回路)は、入力電流の波形を整えて力率を1に近づける回路です。実装方式により力率の到達値が変わります。
| 種類 | 力率の目安 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| アクティブPFC | 0.90〜0.99 | 能動回路で波形を補正。入力電流が小さく安定。やや高価 | 大容量・多灯・大型サイン・分電盤に余裕のない現場 |
| パッシブPFC | 0.65〜0.75 | コイル等で簡易補正。中間的なコストと性能 | 中容量・台数が中程度の一般設置 |
| PFCなし | 0.45〜0.60 | 補正回路なし。安価だが入力電流が大きい | 小容量を1〜2台だけ単独設置する場合 |
仕様書の見方: メーカーの仕様書(データシート)に「力率(Power Factor / PF)」が記載されています。PF0.9以上ならアクティブPFC内蔵、0.7前後ならパッシブ、0.5前後または記載なしはPFCなしと判断してよいでしょう。多灯・大規模では必ずこの数値を確認してください。
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5. 1回路あたりの接続台数の決め方
1つの分岐回路(ブレーカー)にまとめられる電源の台数は、次の手順で計算します。突入電流(インラッシュ)は別途考慮が必要なため、ここでは定常時の入力電流をベースにした目安です。
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回路の安全許容電流を出す ブレーカー定格 × 0.8 で安全側の上限電流を求める。例:20A × 0.8 = 16A。
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各電源の入力電流を計算する 「W ÷(100V × 力率)」で1台あたりの入力電流を算出。力率は仕様書の値を使う。
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合計が安全許容内か確認する 接続予定の全電源の入力電流を合計し、手順1の上限以内に収める。超えるなら回路を分ける。
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突入電流の重なりを避ける 多数の電源が同時に立ち上がると瞬間的に大きな突入電流が流れる。台数が多い場合は突入電流対策品の採用や回路分割を検討する。
具体例として、20A回路(安全側16A)に100Wの電源を接続する場合の目安台数は下表のとおりです。力率の違いで接続できる台数が大きく変わります。
| 電源(100W)の力率 | 1台あたり入力電流 | 16A以内の接続目安 |
|---|---|---|
| PF 0.95(アクティブPFC) | 約1.05A | 約15台 |
| PF 0.70(パッシブPFC) | 約1.43A | 約11台 |
| PF 0.50(PFCなし) | 約2.00A | 約8台 |
突入電流は必ず別枠で: 上表は定常電流の目安です。スイッチング電源は起動時に定格の数倍〜数十倍の突入電流が瞬間的に流れ、台数が増えるほど重なります。多灯設置では突入電流でブレーカーが瞬時遮断することがあるため、台数が多い回路では突入電流対策や回路分割を前提に設計してください。
6. 規模別の力率・PFC選定基準
| 設置規模・用途 | 推奨する力率 | 選定の考え方 |
|---|---|---|
| 小容量1〜2台(棚下・什器の部分照明) | 0.5〜(PFC不問) | 入力電流の合計が小さいためPFCなしでも実用上問題が出にくい |
| 中容量・複数台(店舗の間接照明) | 0.7以上 | 回路電流に余裕を持たせたい。パッシブPFC以上が無難 |
| 大容量・多灯(大型サイン・施設全体) | 0.9以上 | アクティブPFCで入力電流を最小化し、回路設計・幹線負担を軽減 |
| 分電盤・回路に余裕がない既設増設 | 0.9以上 | 少ない電流で増設できるアクティブPFCが有利 |
迷ったらアクティブPFC(PF0.9以上): 力率の高い電源は入力電流が小さく、回路あたりの接続台数を増やせるうえ、幹線・配線への負担も軽くなります。コスト差はありますが、多灯・大規模では設計と施工の自由度が上がるため、迷う場面ではアクティブPFCを基準に選ぶと失敗しにくいです。
7. 電源選定チェックリスト
- 仕様書で力率(PF)の値を確認したか(記載なしはPFCなしと想定する)
- 「W」だけでなく「入力電流(A)」に換算して回路設計を確認したか
- 1回路の入力電流合計を、ブレーカー定格 × 0.8 以内に収めているか
- 多灯・大規模・分電盤に余裕がない現場ではPF0.9以上を選んだか
- 多数台を同一回路にまとめる場合、突入電流の重なりを別途考慮したか
- 既設回路へ増設する際、既存負荷を含めた合計電流を確認したか
- 幹線・配線サイズが入力電流(力率込み)に対して妥当か確認したか