図書館・公民館などの公共施設の照明改修では、「閲覧室は何lx必要か」「書架が暗くて背表紙が読めない」「LED化で資料が傷まないか」という3点でつまずきがちです。これらはいずれもJIS Z 9110(照度基準総則)と図書館特有の設計要件を押さえれば防げます。本ページでは、施工業者・設計担当者が現場でそのまま使える推奨照度と判断基準を整理します。

本ページの照度値について: 以下の数値はJIS Z 9110(照度基準)に基づく公共施設・図書館の推奨照度の代表値です。実際の設計では、施設の用途・運用方針・最新版の規格を確認のうえ決定してください。

1. 図書館のJIS Z 9110 照度基準一覧

図書館は「読む(閲覧)」「探す(検索・カウンター)」「しまう(書庫)」で必要な明るさが大きく異なります。同じ室内でも区域ごとに照度を設計するのが基本です。

区域・作業推奨照度(lx)設計のポイント
一般閲覧室・読書席500lx長時間の読書。机面で確保・均斉度を重視
参考図書室・調査研究閲覧750lx細かい資料を精読。局所照明を併用
児童閲覧室・絵本コーナー500lx低めの机に合わせ、まぶしさを抑える
貸出・返却カウンター/目録検索500lx作業面と来館者の顔がよく見える明るさ
書架(開架・書庫内)200lx水平面より鉛直面照度が重要(後述)
事務室・整理室750lx分類・装備など細かい作業
ロビー・休憩・談話コーナー200lx落ち着いた色温度でくつろぎ感を演出
玄関ホール・エントランス300〜500lx昼間の屋外との明暗差を緩和
廊下・階段100〜150lx足元の安全。階段は段鼻を明確に
便所・洗面200lx清掃性の確認ができる明るさ
貴重資料・古文書展示50〜100lx退色防止のため意図的に低照度(後述)

照度の測定面

照度は作業面で測定します。閲覧机は床上約70〜75cm、児童用は約40〜50cm、書架は棚板の前縁(鉛直面)が基準です。照度計で室内を格子状(2〜3m間隔)に測り、平均値が推奨照度を下回らないかを確認します。

2. 公民館・集会施設の照度基準

公民館・コミュニティセンターは多目的に使われるため、「会議・学習」と「集会・催し」の両方の照度を満たす設計が必要です。調光を組み込み、用途で切り替えられるようにするのが実務的です。

室・用途推奨照度(lx)備考
会議室・講義室・学習室500lx資料・板書が読める明るさ
多目的ホール(集会・式典)200〜500lx調光で用途別に可変
多目的ホール(講演・上映時)100lx前後スクリーン視認のため落とす
調理実習室300lx(手元500lx)手元の局所照明を追加
和室・茶室150〜300lx電球色で和の雰囲気を保つ
展示・ギャラリー150〜300lx展示物に合わせ可変・スポット併用
ロビー・ラウンジ200lxくつろぎ感のある色温度

多目的室は「調光必須」: 一律500lx固定にすると、講演・上映時にスクリーンが見づらく苦情になります。0-10VやPWM対応の調光を入れ、シーン(会議/集会/上映)で明るさを切り替えられるようにしておくと運用クレームを防げます。

3. 図書館特有の落とし穴 — 書架の鉛直面照度

図書館の照明クレームで最も多いのが「書架が暗くて背表紙のタイトルが読めない」です。これは床面の水平面照度(200lx)を満たしていても起こります。原因は、本棚の背表紙が見える面=鉛直面に光が届いていないためです。

改善の3手法

目安: 書架の背表紙面(鉛直面照度)で最下段でも65〜100lx程度を確保すると、利用者が背表紙を無理なく読めます。最上段と最下段の照度差が大きい場合は、棚下LEDテープでの補光が効果的です。

4. 資料を退色させない照明設計(UV・累積照度)

「LED化で本や資料が傷むのでは」という懸念をよく受けますが、LEDは紫外線・赤外線の放射が蛍光灯・白熱灯よりはるかに少なく、資料保護の面ではむしろ有利な光源です。ただし退色は光源の種類だけでなく、照度 × 点灯時間(lx・h)の累積で進行します。

資料の区分推奨照度対策
一般図書(開架)200〜500lx通常のLEDで問題なし
写真・染色資料・浮世絵など光に弱い資料50lx以下低UV・低照度・短時間点灯
古文書・絵画・油彩など50〜150lx人感センサーで非来館時は消灯

退色を抑える実務ポイント

5. 区域別の色温度・演色性の選び方

図書館は「集中して読む空間」と「くつろぐ空間」が同居します。区域ごとに色温度を変えると、利用者の居心地と作業性の両立ができます。

区域推奨色温度演色性(Ra)狙い
一般閲覧室・学習席4000〜5000K(昼白色)Ra80以上集中・覚醒。長時間の読書に適す
児童室・絵本コーナー3500〜4000KRa80以上温かみと安心感
ロビー・談話・休憩3000〜3500K(電球色〜温白色)Ra80以上落ち着き・くつろぎ
書庫・書架4000K前後Ra80以上背表紙の視認性。人感センサー併用
貴重資料・展示3000K(低UV)Ra90以上資料の色を正確に再現・退色抑制
500lx
閲覧室の目安
JIS Z 9110 一般閲覧
200lx
書庫の目安
鉛直面照度を別途確保
Ra90
貴重資料コーナー
色再現+低UV
50lx以下
光に弱い資料
累積照度を抑制

6. 蛍光灯からLEDへの切り替え判断

多くの公共図書館は蛍光灯ベース照明で建設されています。水銀に関する水俣条約により、一般照明用蛍光灯は2027年末を目処に製造・輸出入が禁止される予定で、球切れ後の補充が困難になります。公共施設は更新計画が長期になるため、早めにLED化を検討する価値があります。

方式概要メリット注意点
器具ごと交換LED一体型器具に全交換最も安定・高効率・長寿命初期費用が最大
直管LED(工事あり)安定器を撤去しLED管に置換器具を流用・高効率電気工事士による工事が必要
直管LED(工事なし)既存器具にLED管を挿入低コスト・工事不要安定器劣化リスク・効率が低い

照度設計のやり直しに注意: 蛍光灯と同数のLED器具に置き換えても、光束(lm)や配光が異なるため照度分布が変わります。特に書架まわりは鉛直面照度が落ちやすいので、交換後に照度を実測し、不足箇所は棚下LEDテープで補光する前提で計画します。

7. LEDテープライトを活用できる場面

全般照明は天井器具が主体ですが、図書館・公民館ではLEDテープライトを補助照明として使うと、グレアを抑えながら視認性と演出性を両立できます。

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設計前チェックリスト

よくある質問

図書館の閲覧室はどのくらいの明るさ(照度)が必要ですか?
JIS Z 9110に基づく推奨照度では、一般閲覧室・児童閲覧室・貸出返却カウンターはいずれも500lxが目安です。長時間の精読や調査研究を行う参考図書コーナーは750lx、書庫(書架内)は200lxが標準です。閲覧机の高さ(床上約70〜75cm)の作業面で測定し、平均照度が基準を下回らないことを確認します。
図書館の照明にLEDを使うと本(資料)が傷みませんか?
LEDは紫外線・赤外線の放射が蛍光灯や白熱灯よりはるかに少なく、資料の退色・劣化リスクは低い光源です。ただし退色は「照度×点灯時間(lx・h)」の累積で進行するため、貴重資料・古文書コーナーは照度を50〜100lx程度に抑え、人感センサーで非来館時は消灯し、演色性Ra90以上・低UVのLEDを選ぶのが安全です。
書架(本棚)が暗くて背表紙が読めません。どう改善すればよいですか?
書架の見やすさは床面の水平面照度ではなく、棚の「鉛直面照度」で決まります。書架の列の真上ではなく書架間(通路)の天井に照明を配置する、または棚板の前縁下にLEDテープを取り付けて背表紙面を直接照らすと改善します。あわせて書架を反射率の高い明色仕上げにすると、同じ電力でも体感の明るさが上がります。