照度(lux)とは何か
照度(lux: ルクス)は「ある面に届く光の量」を示す単位で、 1㎡の面に1ルーメン(lm)の光が均一に当たる状態が1luxに相当する。 照明設計における照度は、作業面(床面・机面など)での平均照度を指すことが多い。
| 用語 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|
| 照度(E) | lux(lx) | 照らされる面の明るさ。光束 ÷ 面積で求まる |
| 光束(F) | lm(ルーメン) | 光源が放出する光の総量。LED器具のスペック表に記載 |
| 光度(I) | cd(カンデラ) | 特定方向への光の強さ。スポットライト設計で使用 |
| 輝度(L) | cd/㎡ | 面の明るさ(まぶしさに関係)。グレア評価で使用 |
「明るさ」という言葉は日常的に使われるが、照明設計では照度(lux)を基準に計画する。 同じ器具でも天井高・器具の配置・部屋の反射率によって作業面の照度は変わるため、 単純に「器具のルーメン数」だけでは設計できない。
◯◯ルクスはどれくらいの明るさ?(明るさの目安を照度から逆に引く早見表)
設計するときは「この用途なら何ルクス」と引くが、現場では逆に 「2ルクス・30ルクス・500ルクスと言われても、それがどれくらいの明るさか分からない」 という場面のほうが多い。ここでは照度の数字から、身近な場所と「何ができる明るさか」を引けるようにした。 数字は1行ごとに出どころを示している。
| 照度 | どれくらいか(身近な場所) | 何ができる明るさか | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 2 lux | 停電したときの非常用照明が照らす床面 | 足元が見えて避難できる最低限。物の色や形は分からない | 建築基準法施行令 第126条の5(床面で1ルクス以上/蛍光灯・LEDは2ルクス以上) |
| 5 lux | 夜の住宅街の防犯灯の下 | 4m先の人の姿勢や動きは分かるが、誰なのかまでは分からない | 警察庁「安全・安心まちづくり推進要綱」に基づく照度基準(3ルクスで4m先の挙動、20ルクスで10m先の顔が識別できる) |
| 10 lux | 街灯のある夜道/ろうそくの炎から30cmほど離れた面 | 手元にある物の位置は分かるが、文字は読めない | おおよその目安(街灯のある道は約10ルクス) |
| 30 lux | 住宅の門・玄関まわり(表札や郵便受けを見る) | 表札・郵便受け・鍵穴が見える | JIS Z 9110 住宅の門・玄関(外側)の区分 |
| 80 lux | 倉庫の保管エリア・屋内の階段 | 安全に歩ける。棚の大きな表示は読める | JIS Z 9110 の 75〜100ルクスの区分(記事内の「倉庫・荷捌き 100〜200ルクス」の下限より下) |
| 150 lux | オフィスの廊下・付随的な事務作業の場所 | 通行と、書類を「探す」程度はできる | 事務所衛生基準規則 第10条(付随的な事務作業は150ルクス以上/2022年12月1日施行) |
| 200 lux | 飲食店のホール・ホテルの客室 | 雰囲気を残しつつメニューや顔が見える。細かい文字はつらい | JIS Z 9110 の飲食店(一般)200〜500ルクスの下限 |
| 300 lux | 一般的な事務室(法令上の下限) | 書類とパソコンの作業が一日できる下限 | 事務所衛生基準規則 第10条(一般的な事務作業は300ルクス以上/2022年12月1日施行) |
| 500 lux | オフィスの事務室・会議室(設計の標準) | 長時間の書類作業でも疲れにくい | JIS Z 9110 事務室・会議室(記事内の用途別表と同じ) |
| 750 lux | 製図・細かい書類作業の机の上 | 細かい文字・図面の線がはっきり見える | JIS Z 9110 設計・製図室(記事内の用途別表と同じ) |
| 1,500 lux | 工場の精密検査台・ショーウィンドウ | 微細な傷や色ムラを見分けられる。まぶしさ対策が要る | JIS Z 9110 精密作業・検査(記事内の「工場(精密作業・組立)750〜1,500ルクス」の上限) |
屋外の自然光と比べると桁が変わる。晴れた日の直射日光はおおよそ100,000ルクス、 曇りの日の屋外で10,000〜30,000ルクス、満月の夜で0.2ルクス程度(いずれもおおよその目安)。 室内の500ルクスは、屋外の曇り空の20分の1以下しかない。 「昼間は明るいのに、同じ器具で夜になると暗く感じる」のはこのためで、 窓からの光を当てにした照度計算は昼と夜で成り立たなくなる。 設計では窓の光を足さずに、器具だけで必要照度に届くかを見る。
夜間の1〜5ルクスをもっと細かく見たい場合は、 介護施設の夜間照明の記事に 警察庁の基準(何メートル先の何が識別できるか)で並べた表がある。
用途から引きたい場合はJIS Z 9110 用途別必要照度一覧を、 器具が何台必要かを出したい場合は光束法による照度計算の手順を参照。
JIS Z 9110 用途別必要照度一覧
照度の推奨値は日本産業規格(JIS)が用途・作業内容ごとに定めている。屋内の数値は現在 JIS Z 9125:2023(屋内照明基準)に収録されており、JIS Z 9110は2024年12月20日の改正で総則になった。以下の早見表は旧版 JIS Z 9110:2011 の区分によるものだが、 法的拘束力はないが、照明設計・更新計画・入札仕様書の根拠として広く用いられる。 以下は代表的な用途の推奨照度をまとめた早見表。
業務用施設の推奨照度(JIS Z 9110参考)
マンション共用部の行は JIS Z 9110:2011 表18(共同住宅の共用部分)の維持照度に合わせています(廊下100lux・階段150lux・棟の出入口〈風除室〉100lux・ロビー150lux・車庫100lux)。区域ごとの一覧は マンション共用部の照度基準一覧を参照してください。
| 用途・エリア | 推奨照度(lux) | 備考 |
|---|---|---|
| オフィス(事務室・一般作業) | 500〜750 lux | VDT作業では500lux・書類作業は750lux |
| オフィス(会議室) | 500 lux | プレゼン用途は調光対応が望ましい |
| オフィス(廊下・通路) | 100〜200 lux | 非常口・避難路は常時確保必須 |
| 工場(精密作業・組立) | 750〜1,500 lux | 微細部品・検査工程は1,500lux以上 |
| 工場(重作業・機械室) | 300〜500 lux | 視認性・安全確保が目的 |
| 工場(倉庫・荷捌き) | 100〜200 lux | ラベル確認は150lux以上推奨 |
| 小売店・一般販売 | 500〜1,000 lux | 商品展示エリアは高照度で陳列映えを重視 |
| ショーウィンドウ・陳列棚 | 1,000〜2,000 lux | 商品の質感・色を見せるため高照度に |
| 食品売場・スーパー | 500〜750 lux | 鮮魚・精肉はRa90以上で色の再現性も重要 |
| 飲食店(一般) | 200〜500 lux | 業態・雰囲気でゾーン差をつけるのが一般的 |
| 飲食店(カウンター・手元) | 300〜500 lux | メニュー読みやすさと手元視認性を確保 |
| ドラッグストア・薬局 | 500〜1,000 lux | 医薬品棚は750〜1,000lux・調剤室はさらに高照度 |
| 医療(診察室・処置室) | 500〜1,000 lux | 手術室は10,000lux以上・無影灯を使用 |
| 病院(病室・廊下) | 100〜200 lux(廊下)/ 100〜300 lux(病室) | 夜間は10〜20lux程度に調光対応 |
| 介護施設(居室・廊下) | 居室100 lux / 廊下20〜100 lux | JIS Z 9110・夜間2〜10luxの最低照度維持 |
| 介護施設(共用ホール) | 200〜300 lux | 高齢者の視力低下を考慮してやや高めに |
| 学校(教室) | 300〜750 lux | JIS Z 9110黒板面は750lux |
| 学校(廊下・階段) | 100〜200 lux | 安全確保のための最低照度 |
| マンション共用部(廊下) | 100 lux | JIS Z 9110:2011 表18「廊下」の維持照度。夜間は人感センサーで15〜30luxに落とす2段階が一般的 |
| マンション共用部(駐車場) | 100 lux(屋内)/ 50 lux(屋外・ピロティー) | 表18「車庫」100lux・「ピロティー」50lux。ナンバーの識別を重視する場合は屋内100lux以上を確保 |
| マンション共用部(エントランス) | 150 lux | 表18「ロビー」の維持照度。顔認識・防犯カメラ対応で200luxまで上げる物件が多い |
| 倉庫・物流施設(通路) | 100〜200 lux | ラベル確認・フォークリフト走行路 |
| 倉庫・物流施設(棚間) | 150〜300 lux | ピッキング作業エリアは200lux以上 |
| 駐車場(屋内) | 75〜150 lux | 入口付近は150lux・進入路は100lux以上 |
作業面照度と周囲照度の考え方
JIS Z 9110は「作業面(通常は床上80cm)」での照度を基準とする。 天井・壁への間接照明が主体の場合は、作業面照度が想定より低くなることがあるため、 照度計での現地確認が重要。
光束法による照度計算の手順
照明器具の必要台数を算出する最も一般的な方法が「光束法(lumen method)」。 以下の計算式で求める。
光束法の基本計算式
必要台数 = (目標照度E × 室面積A) ÷ (器具光束F × 照明率U × 保守率M)
E: 目標照度(lux) / A: 室面積(㎡) / F: 器具1台の光束(lm) / U: 照明率 / M: 保守率
各係数の求め方
① 照明率(U)
光源から出た光のうち、作業面に有効に届く割合。 室指数(RC)と部屋の反射率(天井・壁・床)から求める。
| 室指数(RC)の計算 | RC = (W × D) ÷ {H × (W + D)} |
|---|---|
| W: 室の幅(m) | D: 室の奥行(m) |
| H: 光源から作業面までの高さ(m) | 例: W=10m, D=8m, H=2.5m → RC=2.56 |
室指数が大きいほど(広くて低天井)、照明率は高くなる傾向がある。 器具メーカーの光束法計算表(照明率表)で RC と反射率から U を読み取る。 一般的な目安: U = 0.5〜0.75(白い壁・天井の一般的な室内)
② 保守率(M)
照明器具は経年で光量が低下する(LEDでも5〜10年で70%以下に低下するL70寿命が目安)。 この低下を見込んだ係数が保守率。
| 環境 | 保守率(M)の目安 |
|---|---|
| 清潔な室内(事務所・医療施設) | 0.75〜0.80 |
| 一般室内(店舗・学校・住宅) | 0.70〜0.75 |
| やや汚れる環境(工場・倉庫) | 0.60〜0.70 |
| 粉塵・油煙が多い環境(厨房・鋳造工場) | 0.50〜0.60 |
実務での照度計算例
例1: 事務所(W10m × D8m、天井高2.8m、目標照度500lux)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 目標照度(E) | 500 lux |
| 室面積(A) | 80 ㎡(10m × 8m) |
| 使用器具 | LEDベースライト 4,800lm/台 |
| 照明率(U) | 0.65(室指数RC≒2.5、白壁想定) |
| 保守率(M) | 0.75(清潔な事務所) |
| 必要台数 | = (500 × 80) ÷ (4,800 × 0.65 × 0.75) = 40,000 ÷ 2,340 ≒ 17.1台 → 18台 |
| 配置 | 9列 × 2灯 = 18台(5,400lux ÷ 約500lux達成) |
例2: 食品工場検査ライン(W6m × D20m、天井高4m、目標照度1,000lux)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 目標照度(E) | 1,000 lux |
| 室面積(A) | 120 ㎡(6m × 20m) |
| 使用器具 | LED高天井照明 15,000lm/台 |
| 照明率(U) | 0.60(高天井・工場) |
| 保守率(M) | 0.65(食品工場・清掃あり) |
| 必要台数 | = (1,000 × 120) ÷ (15,000 × 0.60 × 0.65) = 120,000 ÷ 5,850 ≒ 20.5台 → 21台 |
| 配置 | 3列 × 7灯 = 21台 |
例3: マンション廊下(W1.5m × D30m、天井高2.5m、目標照度100lux)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 目標照度(E) | 100 lux(JIS Z 9110:2011 表18「廊下」の維持照度) |
| 室面積(A) | 45 ㎡(1.5m × 30m) |
| 使用器具 | LED直付け照明(人感センサー付き)1,200lm/台 |
| 照明率(U) | 0.55(細長い廊下) |
| 保守率(M) | 0.70 |
| 必要台数 | = (100 × 45) ÷ (1,200 × 0.55 × 0.70) = 4,500 ÷ 462 ≒ 9.7台 → 10台 |
| 配置 | 1列 × 10灯(3m間隔) |
LEDテープ照明での照度計算の注意点
LEDテープ照明(間接照明・コーブ照明)を使用する場合、 光源の光束は直接作業面に当たらず反射光で照らすため、 照明率が低くなる(U = 0.3〜0.5が目安)。 LEDテープ単体での必要照度を確保しようとすると多量のテープが必要になるため、 間接照明は「雰囲気・演出」と割り切り、 作業照度の確保はベースライト等の直接照明と組み合わせて設計するのが実務上の定石。
照度と色温度・演色性の組み合わせ
適切な照度を確保しても、色温度・演色性が用途に合っていないと 「明るいが作業しにくい」「商品が映えない」という問題が起きる。 照度・色温度・演色性は3つセットで設計することが重要。
| 用途 | 推奨照度 | 推奨色温度 | 最低Ra |
|---|---|---|---|
| 精密作業・検査(工場) | 750〜1,500lux | 5,000〜6,500K(昼光色) | Ra80以上(Ra90推奨) |
| 事務作業・書類(オフィス) | 500〜750lux | 4,000〜5,000K(白色・昼白色) | Ra80以上 |
| 食品売場(スーパー・飲食) | 500〜750lux | 3,000〜4,000K(温白色〜白色) | Ra90以上 |
| アパレル・ファッション | 750〜1,000lux | 3,500〜4,000K | Ra90以上 |
| 美容院・サロン | 300〜500lux | 3,500〜4,500K | Ra95以上 |
| 高級飲食・ホテル | 100〜300lux | 2,700〜3,000K(電球色) | Ra90以上 |
| 廊下・通路(共用部) | 30〜100lux | 4,000〜5,000K | Ra80以上 |
| 医療・調剤(薬局) | 500〜1,000lux | 4,000〜5,000K | Ra90以上 |
照度計による現地測定の基本
設計値と実測値は必ずしも一致しない。 施工完了後・既存設備の更新前には照度計で実測し、 必要照度を満たしているかを確認することが重要。
測定の手順
- 測定点の選定: 室内を均等なグリッドに分割し、各交点で測定する(例: 10㎡に1点)
- 測定高さ: 作業面(床上80cm)または床面(廊下・駐車場など)
- 安定後に測定: LEDは点灯後数分で安定するため、点灯5分後以降に測定する
- 外光の遮断: 自然光が入る場合は夜間または遮光した状態で測定する
- 平均照度の算出: 全測定点の照度を合計し、測定点数で割る
均斉度(最低照度÷平均照度)の確認
作業エリア内で照度にムラが大きいと視認性・疲労に影響する。 JIS基準では均斉度(最低照度÷平均照度)の目安として オフィスや工場では0.5〜0.7以上が推奨されている。 器具の配置・スペーシングを調整して均斉度を確保する。
よくある質問
Q: JIS Z 9110は法律ですか?守らないと罰則はありますか?
JIS Z 9110は工業規格であり、法的強制力はありません。ただし、建築基準法や労働安全衛生規則では 作業場の照度基準(例: 精密作業は300lux以上)を定めており、これは法的義務になります。 工場・作業場では労働安全衛生規則第604条の照度基準も確認してください。
Q: 照明率の表がない場合はどう計算しますか?
器具メーカーのカタログに照明率表が掲載されています。 メーカー資料が入手できない場合は、 一般的な室内用器具では U = 0.60〜0.70 を目安として概算計算に使うことができます。 ただし精密設計では必ずメーカー提供の照明率表を参照してください。
Q: LEDに変えると照度は上がりますか?下がりますか?
一般的に、同じ消費電力なら蛍光灯よりLEDの方が光束(lm)は多く、照度は上がることが多いです。 一方で、既存器具と同じ「W数(消費電力)」のLEDを選んでも、 光の向きや拡散が異なることで作業面への照度が変わる場合があります。 更新時は消費電力ではなく光束(lm)と配光で器具を選定してください。
Q: 照度計算ソフトは必要ですか?
本格的な照明設計には、各メーカーが無償提供している照明シミュレーションソフト (DIALUX等)を活用することで、3D配光・照度分布を可視化できます。 概算台数の見積もりなら本ガイドの光束法計算で十分対応できます。
Q: LEDテープ照明で500luxを確保できますか?
間接照明・コーブ照明用途のLEDテープ単体では、 作業面500luxを確保するのは現実的ではありません(照明率が低いため非常に多量のテープが必要)。 LEDテープは空間演出・間接光の役割とし、 作業照度はベースライトや直接照明器具で確保するのが標準的な設計です。