「IP65の防水テープを使ったのに、数日後にカバーの内側が真っ白に曇った」「アルミプロファイルの中に水滴が溜まり、しばらくして角だけ消えた」——屋外サインや冷蔵ケース、浴室まわりの施工で必ず相談を受けるのが内部結露です。これは防水施工の失敗ではなく、IP等級では防げない別物の現象です。本記事では、なぜIP65でも内部が曇るのかという仕組みから、現場タイプ別の結露対策(水抜き穴・乾燥剤・端部シール・温度差の遮断)の使い分け、結露によるFPC腐食・ショートを防ぐ施工手順までを施工業者向けに整理します。
結論:IP等級は「外から水を入れない」規格で、「中の湿気を残さない」保証ではありません。屋外・温度差のある現場では、外部防水とは別に「内部の湿気を逃がす/減らす」設計を必ず組み込んでください。
なぜIP65でも内部結露が起きるのか
結露は、空気中の水蒸気が露点温度(その湿度で水滴になる温度)を下回った面で水に戻る現象です。LEDテープのカバーやアルミプロファイルの内部でこれが起きる理由は2つあります。
- 施工時に湿気を含んだ空気を閉じ込めている:カバーを被せた瞬間、その日の外気(水蒸気入り)が中に密封されます。雨上がりや高湿日に施工すると湿度の高い空気が封入されます。
- 昼夜・点灯消灯で内壁の温度が露点を割る:日中の直射で温まったカバーが夜間に急冷される、点灯時に温まった内部が消灯で冷えるなど、温度変化のたびに内壁が露点を下回り、封入空気の水蒸気が水滴になります。
つまりIP等級が高いほど(密閉度が高いほど)、一度入った湿気が抜けず内部結露が長引くという逆転現象すら起こります。外部防水(IP)と内部防湿(結露対策)は別々に設計すべき項目です。
覚え方:IP等級 = 外から水を入れない/結露対策 = 中の湿気を残さない。この2つは目的が違うので、片方を上げても もう片方は解決しません。
結露が起きやすい現場
温度差が大きい・湿度が高い・温度変化が頻繁な現場ほど結露リスクが上がります。代表的な5環境を押さえておきます。
| 現場 | 結露が起きる主因 | リスク度 |
|---|---|---|
| 屋外サイン・チャンネル文字 | 日射での昇温→夜間の放射冷却で大きな温度差 | 高 |
| 冷蔵・冷凍ショーケース | 庫内外の温度差が常時大きい(10〜40℃差) | 最高 |
| 浴室・サウナ・プール・温浴施設 | 常時高湿+蒸気、カバー内へ湿気が侵入しやすい | 高 |
| 半屋外(軒下・庇・ガレージ) | 雨は当たらないが外気の湿度・温度差を受ける | 中 |
| 厨房・洗い場まわり | 蒸気と急な温度変化、油分を含む湿気 | 中 |
結露を放置すると起きるトラブル
「曇るだけ」と軽視されがちですが、内部結露は最終的に故障につながります。
- 光量低下・見栄えの悪化:カバー内側の曇り・水滴で光が散乱し、暗く・むらに見える。サインなら看板価値が落ちます。
- FPC銅箔・はんだ部の腐食:水分とわずかな電位差で電食が進み、配線が細って断線します。点灯直後は無症状でも数週間〜数か月で角や末端が消灯します。
- コネクタ接点の緑青(ろくしょう):差込式コネクタの金属接点が酸化し、接触抵抗増大→発熱→接触不良の連鎖。
- ショート・漏電:溜まった水が+-間をつなぐと地絡・短絡。屋外や水まわりでは安全上の重大リスクです。
結露を防ぐ4つの施工対策
結露対策は「湿気を入れない」「入った湿気を逃がす」「湿気を吸わせる」「温度差を作らない」の4方向です。現場条件で組み合わせます。
対策1:水抜き穴で逃がす(屋外・半屋外の基本)
プロファイルやカバーの最下端(重力で水が落ちる側)に直径2〜3mmの水抜き穴を50〜100cm間隔で開けます。入った水・結露水が自重で抜け、通気で内部湿度も下がります。
- 穴は必ず下面に開ける(上面・側面はNG=雨・水の入口になる)
- 傾斜施工なら最も低い端部に追加で1か所
- 穴のバリは内部の水を留めるので面取りする
対策2:乾燥剤(シリカゲル)を封入する(密閉カバー向け)
完全密閉せざるを得ない端栓構造では、カバー両端の端部空間に小型シリカゲルを入れ、封入空気の湿気を吸わせます。定期交換が前提になるため、点検口またはやり替えやすい端栓を選びます。
対策3:端部シール+取り出し口を下向きに(湿気を入れない)
カバー・プロファイルの木口(端面)と配線の取り出し口は最大の湿気侵入経路です。端栓+シリコンシールで塞ぎ、配線取り出しは必ず下向きにして、ケーブルを伝う水(毛細管現象)が内部へ入らないよう「水切りの垂れ(ドリップループ)」を作ります。
対策4:一体成型(チューブ封止)テープで温度差の影響を受けにくくする
冷蔵ケースなど温度差が常時大きい環境では、空気層を持つアルミ+カバー構造より、LEDをシリコンチューブで一体封止したIP67/IP68テープのほうが内部空気が少なく結露の影響を受けにくくなります。封止材自体が水・湿気を遮断します。
| 対策 | 適する現場 | メンテ性 | コスト |
|---|---|---|---|
| 水抜き穴+通気 | 屋外サイン・軒下・ガレージ | ◎(メンテ不要) | 低 |
| 乾燥剤封入 | 密閉カバー・小型サイン | △(定期交換要) | 低〜中 |
| 端部シール+下向き取出し | 全現場の基本処理 | ◎ | 低 |
| 一体成型IP67/68テープ | 冷蔵ケース・浴室・プール | ◎ | 中〜高 |
IP等級と結露の関係(密閉のジレンマ)
「等級を上げれば結露も止まる」は誤解です。下表のとおり、密閉度が上がると外水は防げても内部湿気は抜けにくくなります。
| IP等級 | 外部防水 | 内部結露への作用 | 結露対策の考え方 |
|---|---|---|---|
| IP20(非防水) | なし | 通気性が高く湿気は溜まりにくい | 屋内乾燥環境のみ。水まわり不可 |
| IP65(防噴流) | 雨・水しぶき可 | 空気層があり温度差で曇りやすい | 水抜き穴+端部シールを併用 |
| IP67(一時浸水) | 一時的な水没可 | 密閉度高め=入った湿気が抜けにくい | 施工時に湿気を入れない+乾燥剤 |
| IP68(常時浸水) | 常時水中可 | 完全封止。内部空気を最小化できれば結露最小 | 一体成型品を選び空気層を作らない |
要点:IP65は「水抜き穴で逃がす」発想、IP67/68は「そもそも湿気を入れない・空気層を作らない」発想。等級で対策の方向が逆になります。
現場タイプ別の推奨設計
| 現場 | 推奨テープ | 主対策 |
|---|---|---|
| 屋外チャンネル文字・サイン | IP65 COB+アルミ/カバー | 下面水抜き穴+端部シール+下向き取出し |
| 冷蔵・冷凍ショーケース | IP67/68 一体成型 | 空気層最小化+取出し下向き+庫外配線 |
| 浴室・サウナ・プール | IP67/68 一体成型 | 端部完全シール+ドライバ別室設置 |
| 軒下・庇・ガレージ(半屋外) | IP65 | 水抜き穴+通気でOK、乾燥剤は不要 |
結露対策・施工前チェックリスト
- 施工日が高湿(雨天・雨上がり)でないか。高湿日はカバー封入を避ける
- 現場の最大温度差を見積もったか(屋外・冷蔵は特に)
- IP等級だけで判断せず、内部防湿の方向(逃がす/入れない)を決めたか
- 水抜き穴を下面のみ・2〜3mm・50〜100cm間隔で計画したか
- カバー木口(端面)の端栓・シールを用意したか
- 配線取り出しを下向きにし、ドリップループを取れる配線長があるか
- 密閉構造なら乾燥剤と、その交換ができる点検性を確保したか
- 冷蔵・水まわりは一体成型IP67/68を選定したか