「プラントの照度管理って、結局何をすればいいのか」。化学工場の照明を入れ替えるとき、設備担当の方からよく聞かれる質問です。答えは意外と短く、法令が求めているのは①作業面の照度の下限を守る ②まぶしさと明暗の差を抑える ③照明設備を6か月以内ごとに点検するの3つです。

ただし化学プラントには、ふつうの工場に無いもう1つの決まりが重なります。引火性の蒸気や可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所では、防爆構造の照明しか使えないという決まりです。この記事では、労働安全衛生規則の条文をそのまま引きながら、照度管理の中身と、防爆の決まりがどこにかかるのかを整理します。

この記事の立ち位置
法令の文面を整理したもので、個別のプラントのどこが危険箇所に当たるかの判断ではありません。 危険箇所の区分と防爆構造の選定は、事業場の安全管理の担当と、防爆の専門の業者・メーカーに確認してください。 条文は e-Gov 法令検索の現行の版(労働安全衛生規則は令和8年10月1日施行の改正まで反映された版)から2026年10月8日に写しました。

先にお伝えしておくこと
LED PRO SHOP で扱っているLEDテープ・アルミフレーム・電源は、防爆構造電気機械器具ではありません。 この記事で説明する「防爆構造でなければ使えない箇所」には使えません。 使えるのは、制御室・事務所・分析室・倉庫など、危険箇所に当たらない場所だけです。

化学プラントの照明にかかる決まりの全体

化学プラントの照明には、目的の違う決まりがいくつも重なっています。「照度基準」と一言でまとめられがちですが、条文ごとに求めていることが違います。

条文求めていること数値
労働安全衛生規則 第604条(照度)常時就業させる場所の作業面の照度を、作業の区分ごとの基準に合わせる精密な作業300lx以上・普通の作業150lx以上・粗な作業70lx以上
同 第605条第1項(採光及び照明)明暗の対照が著しくなく、まぶしさを生じさせない方法にする数値なし
同 第605条第2項常時就業させる場所の照明設備を定期に点検する6か月以内ごとに1回
同 第541条(通路の照明)通路は、正常の通行を妨げない程度に採光または照明する数値なし
同 第280条〜第282条爆発の危険のある箇所では防爆構造電気機械器具しか使わない数値なし(場所の区分で決まる)
労働安全衛生法施行令 第14条の2 第3号防爆構造電気機械器具は型式検定を受けるべき機械等―

数値で決まっているのは604条の3つの照度と、605条の「6か月以内ごと」だけです。あとは「どういう照らし方にするか」「どこに何を使ってよいか」という決まりです。

第604条:作業面の照度の下限(300・150・70ルクス)

まず照度の数値です。第604条の原文はこうなっています。

労働安全衛生規則 第604条(照度・原文)
「事業者は、労働者を常時就業させる場所の作業面の照度を、次の表の上欄に掲げる作業の区分に応じて、同表の下欄に掲げる基準に適合させなければならない。ただし、感光材料を取り扱う作業場、坑内の作業場その他特殊な作業を行なう作業場については、この限りでない。」

作業の区分基準
精密な作業300lx以上
普通の作業150lx以上
粗な作業70lx以上

読むときに外せない点が3つあります。

  • 対象は「常時就業させる場所」。人が常にいない配管ラックの上やタンクの裏側は、この表の対象ではありません。巡回で通るだけの場所は、次の第541条(通路)の話になります。
  • 測るのは「作業面」。床ではなく、計器を読む面・バルブを操作する高さ・サンプルを扱う台の上です。
  • 数値は下限。「この明るさ以上にしなさい」という線で、ちょうどこの値を目標にすると、汚れや経年で必ず下回ります。

「どの作業が精密で、どれが粗か」は条文に書かれていません。プラントの中で当てはめるなら、計器の目盛りを読む・サンプルの色を見る・ラベルを確かめるといった作業は細かい側、荷の積み下ろしや通り抜けに近い作業は粗い側に寄ります。区分の決め方は事業場で判断し、決めた理由を残しておくと、後で照度を測ったときの合否がはっきりします。

屋外のプラントにもかかるのか

第604条は屋内に限るとは書いていません。条文の対象は「労働者を常時就業させる場所」です。屋外の操作盤の前で常に作業する人がいるなら、その作業面が対象になると読むのが自然です。逆に、夜間に巡回で通るだけの屋外通路は、常時就業の場所というより第541条の「通路」の扱いになります。

第605条:照度管理の中身は「まぶしさ」と「6か月点検」

「照度管理」という言葉でいちばん中心になるのが第605条です。

労働安全衛生規則 第605条(採光及び照明・原文)
「事業者は、採光及び照明については、明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法によらなければならない。
2 事業者は、労働者を常時就業させる場所の照明設備について、六月以内ごとに一回、定期に、点検しなければならない。」

第1項は照らし方の決まり、第2項は点検の決まりです。第2項は「六月以内ごとに一回」と期間がはっきりしています。年に1回の点検では足りません。

6か月点検で何を見るか

条文は「点検しなければならない」とだけ書いていて、何を見るかの項目や、記録の様式までは書いていません。そのうえで、照度管理として意味のある点検にするなら、次の4つを見るのが実務的です。

見る物やり方なぜ見るか
作業面の照度照度計で、決めておいた同じ地点・同じ高さを測る第604条の下限を割っていないかの確認。前回の値と並べると落ち方が分かる
点かない・ちらつく器具全数を点灯して目で見る1灯の不点灯で、局所的に下限を割ることがある
カバー・反射面の汚れ粉じん・油・薬品の付着を見る器具そのものが元気でも、汚れで作業面の照度は下がる
まぶしさ・明暗の差作業者の目線で、光源が直接目に入らないか・影が濃すぎないか第605条第1項(明暗の対照・まぶしさ)の確認

照度を測るときは、毎回同じ地点で測ることがいちばん大切です。地点がずれると、照明が暗くなったのか測り方が変わったのかが分からなくなります。図面に測定点の番号を振り、高さも決めておくと、半年ごとの値をそのまま並べられます。

化学プラントで照度が落ちやすい理由

化学プラントの照明は、ふつうの工場より暗くなるのが早い傾向があります。理由は単純で、器具の表面に付く物が多いからです。

  • 粉じん:原料の粉や触媒の粉が器具のカバーに積もる
  • 油分・ミスト:回転機器や配管の周りでは、油の膜がカバーを曇らせる
  • 薬品の蒸気:樹脂のカバーが変色・白化して、光を通しにくくなる

LEDに替えると器具の寿命は延びますが、カバーが汚れる速さは光源の種類と関係がありません。LED化した後も、6か月点検で照度を測り、カバーの清掃を続けることが照度管理の本体です。

第541条:巡回の通路は「通行を妨げない程度」

労働安全衛生規則 第541条(通路の照明・原文)
「事業者は、通路には、正常の通行を妨げない程度に、採光又は照明の方法を講じなければならない。ただし、坑道、常時通行の用に供しない地下室等で通行する労働者に、適当な照明具を所持させるときは、この限りでない。」

通路には数値がありません。「正常の通行を妨げない程度」という書き方です。プラントの夜間巡回では、足元の段差・配管のつまずき・バルブのハンドルなど、通行を妨げる物が多くあります。数値が無いからこそ、実際に夜に歩いてみて、段差と障害物が見えるかで確かめるのが確実です。

ただし書きにあるとおり、常時通行に使わない場所では、懐中電灯などの照明具を持たせることで代えることもできます。

第280条〜第282条:爆発の危険のある箇所は防爆構造だけ

ここが化学プラントの照明でいちばん重い決まりです。第280条の原文を写します。

労働安全衛生規則 第280条(爆発の危険のある場所で使用する電気機械器具・原文)
「事業者は、第二百六十一条の場所のうち、同条の措置を講じても、なお、引火性の物の蒸気又は可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所において電気機械器具(電動機、変圧器、コード接続器、開閉器、分電盤、配電盤等電気を通ずる機械、器具その他の設備のうち配線及び移動電線以外のものをいう。以下同じ。)を使用するときは、当該蒸気又はガスに対しその種類及び爆発の危険のある濃度に達するおそれに応じた防爆性能を有する防爆構造電気機械器具でなければ、使用してはならない。
2 労働者は、前項の箇所においては、同項の防爆構造電気機械器具以外の電気機械器具を使用してはならない。」

照明器具は「電気を通ずる機械、器具その他の設備」に入ります。つまり、この箇所で使う照明は防爆構造電気機械器具でなければならないということです。第2項は労働者の側にも同じことを求めていて、持ち込みの作業灯にも同じ決まりがかかります。

第280条・第281条・第282条の違い

条危険の元求めていること
第280条引火性の物の蒸気・可燃性ガスその種類と、危険な濃度に達するおそれに応じた防爆性能を持つ防爆構造電気機械器具
第281条可燃性の粉じん(マグネシウム粉・アルミニウム粉等の爆燃性の粉じんを除く)その粉じんに対し防爆性能を持つ防爆構造電気機械器具
第282条爆燃性の粉じんその粉じんに対し防爆性能を持つ防爆構造電気機械器具

3つとも、出発点は第261条です。第261条は、引火性の物の蒸気・可燃性ガス・可燃性の粉じんが存在して爆発や火災が生ずるおそれのある場所で、通風・換気・除じん等の措置を求めています。その措置を講じても、なお危険な濃度に達するおそれのある箇所が、第280条・第281条の対象です。

防爆構造電気機械器具は型式検定の対象

労働安全衛生法施行令 第14条の2は、型式検定を受けるべき機械等を並べています。その第3号が「防爆構造電気機械器具(船舶安全法の適用を受ける船舶に用いられるものを除く。)」です。防爆の照明は、見た目が頑丈な器具であればよいのではなく、型式検定を受けた機械等であることが前提になります。

どの範囲が第280条の「箇所」に当たるか、どの防爆性能が必要かは、扱う物質と設備の状態で決まります。これは照明の業者が決めることではなく、事業場の危険場所の区分によります。照明を入れ替える前に、図面で区分の範囲を確かめてください。

LEDテープが使える場所・使えない場所

ここまでの決まりを、LEDテープを使う立場から並べ直します。冒頭に書いたとおり、LED PRO SHOP のテープ・アルミフレーム・電源は防爆構造電気機械器具ではありません。

場所LEDテープ(防爆でない)確かめること
第280条〜第282条の箇所(危険箇所)使えない型式検定を受けた防爆構造の照明を選ぶ
制御室・計装室使える(危険箇所の外であること)モニターへの映り込み(第605条のまぶしさ)
事務所・休憩室使える事務室は事務所衛生基準規則の照度(一般的な事務作業300lx以上・付随的な事務作業150lx以上)
分析室・品質管理室使える(危険箇所の外であること)色を見る作業は演色性。サンプルの色の判定に使うなら高演色の光源
製品倉庫・資材庫使える(危険箇所の外であること)棚の上段と下段の照度差
屋外の通路・階段防水の等級が合う物なら使える(危険箇所の外であること)IP等級。屋内用のIP20は屋外に使えない

「危険箇所の外であること」を何度も書いたのは、同じ建屋の中でも、危険箇所の範囲が部屋の一部だけにかかることがあるからです。制御室の隣が危険箇所という配置は珍しくありません。テープを付ける面が、図面上の区分のどこにあるかを、施工の前に必ず確かめてください。

制御室・分析室でLEDテープが向いている理由

危険箇所の外であれば、制御室や分析室はLEDテープの得意な場所です。

  • 間接照明で映り込みを減らせる:天井の折り上げや壁の上部にテープを仕込み、天井面を照らすと、モニターに光源が映りにくくなります。第605条第1項の「まぶしさを生じさせない方法」にそのまま合います。
  • 連続した線で影が出にくい:粒の見えないCOBテープは、棚下や作業台の手元に線で光を置けるので、手元の影が濃くなりにくい。
  • 発熱が分散する:1本の器具に熱が集まらないので、狭い計装盤まわりでも扱いやすい。

ただし、制御室でも作業面の照度は第604条の下限を守る必要があります。間接照明だけで300lxを取るのは難しいことが多く、全体は天井の照明、手元と映り込み対策にテープという分け方が現実的です。

照度管理の手順(入れ替え前から6か月点検まで)

順番やること根拠
1図面で危険箇所の区分を確かめ、照明を入れ替える範囲を「防爆が要る所」と「要らない所」に分ける第280条〜第282条
2常時就業の場所ごとに、作業の区分(精密・普通・粗)を決め、理由を残す第604条
3作業面の高さと測定点を決め、図面に番号を振る第604条(作業面)
4入れ替え後に全測定点を測り、最初の値として残す第604条・第605条第2項
5作業者の目線で、まぶしさと影の濃さを確かめる第605条第1項
6夜間に巡回の通路を歩き、段差と障害物が見えるか確かめる第541条
76か月以内ごとに同じ測定点を測り、清掃と不点灯の交換をする第605条第2項

4番の「最初の値」を残しておくと、半年ごとの値と比べて、どの場所の照度が早く落ちるかが見えてきます。早く落ちる場所は、汚れが多い場所か、器具の向きが合っていない場所です。清掃の回数を増やすか、器具の位置を見直すかの判断材料になります。

見積りの前に用意しておくと話が早いもの

危険箇所の外で、制御室や分析室の照明をLEDテープで入れ替える場合、次の情報があると、テープの長さ・電源の容量・必要な部材をすぐに出せます。

  • 付けたい場所の写真(全体と、付ける面の近く)
  • 付ける長さのおおよそ(何mを何列か)
  • その場所が危険箇所の外であること(図面の区分で確かめた結果)
  • 欲しい明るさのイメージ(手元を照らしたいのか、天井を照らして部屋全体を柔らかくしたいのか)
  • 近くの電源の位置

テープの長さと電源の容量の計算は、照度計算と器具台数の記事、屋外や水まわりに使う場合の防水等級はIP等級の記事にまとめています。

よくある質問(FAQ)

化学プラントの照度は何ルクス以上にすればよいですか?
労働安全衛生規則第604条で、常時就業させる場所の作業面の照度は、精密な作業300lx以上・普通の作業150lx以上・粗な作業70lx以上と決まっています。数値は下限なので、汚れや経年で下がる分を見込んで、これより明るめに設計します。
プラントの照明の点検は年に1回で足りますか?
足りません。労働安全衛生規則第605条第2項で、常時就業させる場所の照明設備は6か月以内ごとに1回、定期に点検することになっています。条文に点検項目や記録の様式は書かれていないので、作業面の照度・不点灯・カバーの汚れ・まぶしさを同じ地点で見て残しておくのが実務的です。
プラントの通路の照度に決まった数値はありますか?
労働安全衛生規則第541条は、通路について「正常の通行を妨げない程度に、採光又は照明の方法を講じなければならない」としていて、ルクスの数値はありません。夜間に実際に歩き、段差や配管・バルブなどの障害物が見えるかで確かめるのが確実です。
危険箇所にLEDテープを付けてもよいですか?
防爆構造でないLEDテープは使えません。労働安全衛生規則第280条〜第282条で、爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所では、防爆構造電気機械器具でなければ使用してはならないとされています。LED PRO SHOP のLEDテープ・電源は防爆構造ではないため、危険箇所の外(制御室・事務所・分析室・倉庫など)でだけお使いください。
防爆の照明は、頑丈で密閉された器具なら何でもよいのですか?
いいえ。労働安全衛生法施行令第14条の2第3号で、防爆構造電気機械器具は型式検定を受けるべき機械等とされています。見た目ではなく、扱う蒸気・ガス・粉じんの種類と危険の度合いに応じた防爆性能を持ち、型式検定を受けた物を選びます。選定は防爆の専門の業者・メーカーに確認してください。
プラントの中の事務所や制御室も604条の数値ですか?
事務作業を行う室は、事務所衛生基準規則第10条の基準(一般的な事務作業300lx以上・付随的な事務作業150lx以上)が当てはまります。同じ条文に、まぶしさを生じさせない方法と、6か月以内ごとの点検も書かれています。

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