蛍光灯からLEDへ更新した後や、LED照明を引き渡す前の竣工検査。電気工事では当然のように絶縁抵抗測定(メガー)を行いますが、LED照明では「いつもどおり回路全体を500Vで測ったらLED電源(ドライバー)が壊れた」というトラブルが起こります。LEDは内部に電子回路を持つため、白熱灯や安定器式の蛍光灯と同じ感覚で測ると一発で破損させてしまうのです。本記事では、施工業者・電気工事士が現場でLEDを壊さずに絶縁抵抗を測る手順、測定電圧の選び方、対地電圧別の基準値(0.1/0.2/0.4MΩ)、停電させたくないときの漏れ電流測定までを、具体的な数値の目安つきで整理します。

結論を先に: 絶縁抵抗測定は「電線(配線)の絶縁」を測るもの。LED電源・調光器・センサーなどの電子機器を切り離してから測るのが大原則です。機器を含めて確認したいときは、停電不要の漏れ電流(Ior)測定で代替します。

なぜLED照明はメガーで壊れるのか

絶縁抵抗計(メガー)は、測定のために250V・500Vといった高い直流電圧を回路に印加し、その状態で流れるわずかな漏れ電流から絶縁抵抗値(MΩ)を求める計器です。電線同士・電線と大地の間の絶縁を見るには最適ですが、この高い直流電圧がLED内部の電子部品にとっては過大なストレスになります。

  • LED電源(ドライバー):入力側のサージ吸収素子(バリスタ)・コンデンサ・ICが、印加した直流高電圧で破損・劣化する。
  • 調光器・コントローラー:内部の半導体(トライアック・FET)やマイコンが破損する。
  • 直管LED・電源内蔵器具:安定器をバイパスした配線のまま測ると、LED側の整流回路に直流が回り込み傷める。

つまり問題は「LEDが弱い」のではなく、電子機器をつないだまま絶縁抵抗を測る手順そのものが誤りだという点にあります。

対地電圧別の絶縁抵抗 基準値

絶縁抵抗の合否は、電気設備技術基準(電技省令第58条)で使用電圧・対地電圧ごとに定められています。LED照明回路の大半は単相100V/200Vなので、下表の上2行が実務で使う基準です。

使用電圧の区分対地電圧絶縁抵抗の基準該当する代表回路
300V以下150V以下0.1MΩ 以上単相100V照明回路
300V以下150V超0.2MΩ 以上単相200V回路
300V超0.4MΩ 以上三相400V級設備

合格ラインと実務の目安: 上表は「これを下回ると不合格」という最低ライン。新設・更新工事では基準ギリギリではなく、1MΩ以上(できれば数MΩ以上)を健全の目安にします。0.1〜0.3MΩ台で合格はするが低め、という配線は被覆損傷や湿気の初期サインのことがあります。

測定電圧(レンジ)の選び方

絶縁抵抗計には125V・250V・500V・1000Vなどの測定電圧レンジがあります。回路の電圧と、電子機器を含むかどうかで選びます。

100V 回路(配線のみ) 125 / 250V

電子機器を外した電線の絶縁測定に

200V 回路(配線のみ) 250 / 500V

対地電圧150V超は0.2MΩ以上が必要

電子機器を含む恐れ 250V 以下

どうしても測るなら低電圧側で短時間

停電できない現場 漏れ電流

クランプ式でIor測定に切替(後述)

原則は「回路の使用電圧以上で、かつ機器を傷めない最小の測定電圧」。100V回路の配線だけなら125Vでも測れますが、判定の安定性から250Vを使う現場が多いです。500V以上はモーター・動力など堅牢な負荷向けで、LED器具が残った回路には使いません。

LEDを壊さない測定手順

  1. 停電・施錠(検電):対象回路のブレーカーを切り、検電器で無電圧を確認。再投入防止の表示をする。
  2. 電子機器を切り離す:LED電源・調光器・センサー・タイマーを回路から外すか、器具側コネクタを抜く。直管LEDはランプを外す。
  3. 測定電圧を選ぶ:100V回路なら250V、200V回路なら250〜500Vレンジに設定。
  4. 線間・対地で測定:電線相互間(L-N)と、電線と接地(アース)間をそれぞれ測る。印加は数秒で値が落ち着くまで。
  5. 基準値と照合:100V回路は0.1MΩ以上、200V回路は0.2MΩ以上。実務目安は1MΩ以上。
  6. 機器を復旧・再通電:外した電源・器具を戻し、点灯と動作を確認する。

やりがちな失敗: 分電盤で「主幹を入れたまま回路を一括測定」すると、つながっている全器具のLED電源にまとめて高電圧がかかります。回路を分離し、電子機器を切り離してから測る——この一手間が破損を防ぎます。

停電できないとき:漏れ電流(Ior)測定

営業中の店舗・稼働中の施設では停電や機器の切り離しが難しいことがあります。その場合は、クランプ式漏れ電流計で活線のまま漏れ電流を測る方法が有効です。電子機器をつないだまま測れるためLEDを傷めません。

  • Io(全漏れ電流):対地静電容量による分も含む総合的な漏れ電流。LED電源はノイズフィルタのコンデンサを持つためIoは大きめに出やすい。
  • Ior(抵抗分漏れ電流):絶縁劣化に直結する成分。LED回路ではIorで判断するのが実態に合う。一般にIor 1mA以下を健全の目安とする運用が多い。

絶縁抵抗測定(停電・機器切り離し)と漏れ電流測定(活線・機器接続のまま)は、現場条件で使い分けます。竣工検査は前者、稼働中設備の定期点検は後者が向きます。

項目絶縁抵抗測定(メガー)漏れ電流測定(クランプ)
停電必要不要(活線)
電子機器切り離すつないだまま可
LEDへの影響手順を誤ると破損傷めない
主な用途新設・更新の竣工検査稼働中設備の定期点検
判定の目安0.1/0.2/0.4MΩ以上Ior 概ね1mA以下

絶縁抵抗が低いときに疑う箇所

機器を切り離して測っても値が基準を下回る/低めのときは、配線そのものの絶縁が落ちています。次の順で確認します。

  • 湿気・水分:屋外・浴室・冷蔵区画の接続箱に水分。乾燥後に再測定で回復することも。
  • 被覆の損傷:ステップル打ち込み・ビス・配管通線時の擦れで芯線が露出。
  • 端子・圧着部の汚れ:端子台や接続箱内のホコリ・結露による漏れ。
  • 器具の取り残し:切り離したつもりの電子機器が一部残っている(最も多い原因)。

引き渡し前チェックリスト

  • 対象回路を停電し、検電器で無電圧を確認した
  • LED電源・調光器・センサーなど電子機器を切り離した(直管LEDはランプを外した)
  • 測定電圧を回路に合わせて選んだ(100V→250V/200V→250〜500V/機器残存の恐れ→250V以下)
  • 線間(L-N)と対地(電線-アース)の両方を測定した
  • 100V回路0.1MΩ以上/200V回路0.2MΩ以上を満たし、実務目安1MΩ以上を確認した
  • 停電できない現場では漏れ電流(Ior)測定に切り替えた
  • 測定後に機器を復旧し、点灯・調光動作を確認した

まとめ

LED照明の絶縁抵抗測定で失敗しないコツは、たった2つです。①電子機器(LED電源・調光器)を切り離してから測る、②回路に合った測定電圧を選ぶ。この原則を守れば、メガーでLEDドライバーを壊すことはありません。停電や機器の切り離しが難しい現場では漏れ電流(Ior)測定に切り替え、活線のまま絶縁の健全性を確認します。基準値は100V回路0.1MΩ以上・200V回路0.2MΩ以上が合否ライン、実務では1MΩ以上を目安に。施工後の通電確認はテスターでの通電チェック手順、金属面への施工時の絶縁は金属面への絶縁処理もあわせてご確認ください。

よくある質問

LED照明を絶縁抵抗計(メガー)で測ると壊れますか?
LED電源(ドライバー)や調光器が接続されたまま測ると、メガーが印加する250〜500Vの直流電圧で内部の電子部品が破損することがあります。絶縁抵抗測定は電線(配線)の絶縁を測るものなので、電源・調光器・センサーなどの電子機器を切り離してから測るのが原則です。やむを得ず機器をつないだまま確認したいときは、停電させずに測れる漏れ電流(Ior)測定で代替します。
LED照明回路の絶縁抵抗の基準値はいくつですか?
電気設備技術基準により、使用電圧300V以下で対地電圧150V以下(単相100V回路など)は0.1MΩ以上、300V以下で対地電圧150V超(単相200V回路など)は0.2MΩ以上、300V超は0.4MΩ以上が必要です。新設・更新工事では基準ギリギリではなく、余裕をもって1MΩ以上あることを目安にすると安心です。値が低いときは電線の被覆損傷・湿気・端子の汚れ・接続箱内の水分などを疑います。
蛍光灯をLED(直管LED)に交換した後、メガー測定で注意することは?
直管LEDや電源内蔵LEDは内部に電子回路を持つため、安定器をバイパスした配線のまま回路全体を高い測定電圧で測るとLED側を傷めることがあります。ランプを外す、または器具側を切り離して配線(電線)だけの絶縁を測るのが安全です。測定電圧も500Vではなく250V以下のレンジを選び、印加時間は必要最小限にします。器具を含めて確認したい場合は漏れ電流測定に切り替えてください。

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