よくある施工リスク:「配線が短絡して被覆が溶けた・焦げた」
LEDテープのDC配線でプラスとマイナスが触れて短絡すると、電源の保護が働く前に細い配線が一瞬で過熱し、被覆溶融・発火に至ることがあります。電源側に保護があっても、電源から先の配線は無防備になりがちです。ヒューズは「LEDを守る」ためではなく「配線を守る」ために入れる——これが過電流保護の出発点です。
なぜDC配線にヒューズ・回路保護が要るのか
スイッチング電源には過負荷・短絡保護が内蔵されていることが多いですが、その保護は電源自身を守るための動作です。電源から先のDC配線で短絡が起きると、電源の保護が落ちるまでの短時間でも、許容を超える電流が細い配線に流れて急激に発熱します。
とくに振動・水分・人の出入りでショートしやすい環境(什器・移動什器・屋外サイン・車載・イベント設営)や、配線が長い・束ねる・金属に這わせる現場では、配線側に独立した過電流保護を設けるのが安全です。保護は配線の最上流(電源直近のプラス側)で切るのが鉄則です。
原則:ヒューズ容量は「LEDの最大負荷を流せる大きさ」かつ「配線の許容電流を超えない大きさ」の両方を満たすこと。配線が先に焼けるヒューズ設定(配線許容<ヒューズ容量)は保護になりません。
ヒューズ容量の計算手順
ヒューズ容量の決め方(DC低電圧回路)
① 最大負荷電流 = LED合計消費電力(W) ÷ 電源電圧(V)
② ヒューズ容量 = 最大負荷電流 × 1.25〜1.5(突入余裕)
→ 規格値(3A/5A/7.5A/10A…)に切り上げ
③ 条件: ヒューズ容量 ≦ 配線(ハーネス)の許容電流
(これを満たさない場合は配線を太くする)
例:24V・8W/m × 10m = 80W → 80W ÷ 24V ≒ 3.3A
ヒューズ = 3.3A × 1.5 ≒ 5A(規格値5Aを選択)
条件確認:使用配線0.75mm²の許容が約7A → 5A ≦ 7A で成立(OK)
負荷電流とヒューズ・配線の早見表
下表は一般的なDC配線の目安です。配線の許容電流は被覆種類・周囲温度・束ね方で変わるため、実際はメーカー値で確認してください。
| 最大負荷電流 |
推奨ヒューズ容量 |
最低配線断面積の目安 |
判定 |
| 〜2A |
3A |
0.5mm²(許容約5A) |
OK ✓ |
| 〜3.5A |
5A |
0.75mm²(許容約7A) |
OK ✓ |
| 〜5A |
7.5A |
1.25mm²(許容約12A) |
OK ✓ |
| 〜7A |
10A |
2.0mm²(許容約17A) |
OK ✓ |
| 5A負荷に10Aヒューズ+0.5mm²配線 |
10A(過大) |
0.5mm²(許容約5A) |
不可 ✗ 配線が先に焼ける |
保護デバイスの種類と使い分け
①
管ヒューズ/ブレードヒューズ
最も安価で確実。溶断したら交換が必要。ヒューズホルダ・インラインヒューズで配線途中に挿入する。DC定格電圧(例:DC32V以上)が回路電圧以上の品を選ぶ。
②
サーキットプロテクタ(再起動式)
過電流で遮断し、原因除去後にボタンやレバーで復帰できる。交換不要で保守性が高い。常設の什器・サインや、点検しにくい場所に向く。
③
ポリスイッチ(PTC)
過電流で抵抗が急増し電流を制限、冷えると自動復帰する自己復帰型。小電流回路の基板保護向き。大電流幹線の主保護には管ヒューズ等を併用する。
正しい設置位置と配線手順
- ヒューズは電源のプラス(+)出力の直近に入れる。保護したい配線の最上流で切ることで下流全体を守れる。GND側だけに入れるのは不可。
- ヒューズ容量を最大負荷×1.25〜1.5で算出し規格値に丸める。同時に配線許容電流以下であることを必ず確認する。
- ヒューズホルダ・インラインヒューズの定格電圧がDC回路電圧以上(12V/24V回路ならDC32V品など)であることを確認する。AC用ヒューズの流用は避ける。
- 複数系統に分岐する場合は幹線に主ヒューズ+各分岐に分岐ヒューズの多段構成にする。1系統の短絡で全系統が落ちるのを防げる。
- 圧着端子・ヒューズホルダの接続が緩いと接触抵抗で発熱するため、確実に圧着・締結し、増し締め点検を施工後に行う。
- 施工後、意図的な過電流試験は行わず、テスターでヒューズ前後の導通と、+−間の短絡が無いことを確認してから通電する。
AC一次側との区分:ここで扱うのは電源より後段のDC低電圧側の保護です。AC100V/200Vの一次側のブレーカ・漏電遮断器・接地は電気工事士の資格範囲となるため、有資格者が施工してください。施工区分は電源の入力端子で明確に分けます。
分岐回路の保護構成(多系統サイン・什器)
幹線(主保護)
位置電源+出力直近
容量全系統合計×1.25〜1.5
配線合計電流に耐える太さ
各分岐(分岐保護)
位置分岐点の各+線
容量その系統負荷×1.25〜1.5
狙い1系統障害の局所化
環境別の配慮
屋外/車載防水ホルダ・振動対策
常設什器再起動式が保守◎
束ね配線許容電流を減じて計算
過電流保護チェックリスト
- LEDの最大負荷電流(合計W÷電圧V)を算出した
- ヒューズ容量を最大負荷×1.25〜1.5で求め、規格値に丸めた
- ヒューズ容量が使用配線(ハーネス)の許容電流以下に収まっている
- ヒューズを電源のプラス側・電源出力の直近に設置した(GND側のみは不可)
- ヒューズホルダの定格電圧がDC回路電圧以上の品である
- 複数系統は幹線+分岐の多段保護にした
- 圧着・締結が確実で、屋外・車載は防水/防振ホルダを使用した
- 通電前にテスターで+−間の短絡がないこと、ヒューズ前後の導通を確認した
よくある質問
Q. LEDテープのDC配線にヒューズは必要ですか?
強く推奨します。電源(PSU)自体に過負荷・短絡保護が内蔵されていても、電源から先のDC配線で短絡(プラスとマイナスの接触)が起きると、電源の保護が働く前に細い配線が一気に発熱して被覆溶融・発火に至る恐れがあります。とくに自動車・什器・屋外サインのように振動や水分でショートしやすい環境、配線が長い・束ねる現場では、電源直近のプラス側にヒューズまたはサーキットプロテクタを入れて回路を保護してください。ヒューズは「機器を守る」より「配線を守る」ために入れるのが基本の考え方です。
Q. ヒューズの容量(A)はどう決めればいいですか?
まずLEDテープの最大負荷電流を求めます。電流(A)=合計消費電力(W)÷電源電圧(V)です。例えば24V・8W/mを10m使うなら 80W÷24V≒3.3A。これに対しヒューズは突入電流による誤断を避けるため、最大負荷の1.25〜1.5倍程度を選び、規格値に丸めます(3.3A×1.5≒5A)。ただし重要なのは、ヒューズ容量が配線(ハーネス)の許容電流を超えないことです。配線が4Aまでしか流せないのに10Aヒューズを入れると配線が先に焼けるため、ヒューズは必ず配線許容電流以下に設定します。
Q. ヒューズはプラス側とマイナス側どちらに、どの位置に入れますか?
DC回路では電源のプラス側に、できるだけ電源出口の直近に入れます。理由は、保護したい配線の最上流(電源側)で切ることで、短絡時に下流の配線全体を保護できるためです。マイナス(GND)側に入れると、ショート箇所によってはヒューズを経由せずに電流が流れ保護できない場合があります。複数系統に分岐する場合は、幹線に主ヒューズを入れたうえで各分岐にも分岐ヒューズを入れる多段構成にすると、1系統の短絡で全系統が落ちるのを防げます。
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