納品したLED間接照明を施主や撮影スタッフがスマホ・一眼・配信カメラで撮ると、肉眼では見えない「横縞(フリッカーバンディング)」や「ちらつき」が映り込む——美容室・物販店・スタジオ・配信ブースなどで増えているクレームです。原因はLEDテープのPWM(パルス幅変調)調光による点滅と、カメラのシャッター・フレームレートの干渉にあります。このページでは、なぜ縞が出るのかを仕組みから整理し、安全なPWM周波数の目安、現場での切り分け手順、フリッカーフリー電源・高周波調光の選び方を施工業者の目線で解説します。

1. なぜ撮影すると横縞が出るのか(PWM+ローリングシャッター)

LEDテープの明るさは、多くの製品でPWM調光=高速のON/OFF点滅の「点灯している時間の割合(デューティ比)」で制御しています。たとえば1kHzのPWMなら1秒間に1,000回点滅しており、人の目には残像でなめらかに見えます。

一方、スマホや一般的なミラーレス/一眼の動画はローリングシャッター方式で、センサーの画素を上の行から下の行へ「順番に」読み取ります。露光のタイミングが行ごとにずれるため、LEDが点灯している瞬間に読まれた行は明るく、消灯中に読まれた行は暗く記録され、画面に明暗の横帯(バンディング)として現れます。

3つの条件が重なると縞が出ます: ①LED側がPWMで点滅している ②カメラがローリングシャッターで行ごとに読み取る ③点滅周期と露光(シャッター)周期が整数比で揃っていない。点滅周波数を上げて1回の露光に多くの点滅を含めるほど、明暗が平均化されて縞が消えます。

2. 目視フリッカーとカメラフリッカーの違い

「目でちらつかない=撮影でも大丈夫」ではありません。両者は判定基準が違います。目視フリッカーは概ね数百Hzで気にならなくなりますが、カメラはシャッターが速いほど低い点滅も拾うため、より高い周波数が必要です。一般的な目視のフリッカーフリー対策とは別軸で考えてください。

観点目視フリッカーカメラフリッカー(撮影縞)
感じる主体人の目(残像で平均化)センサー(行ごとに瞬間を記録)
問題になりにくい周波数概ね数百Hz以上で軽減用途次第で1k〜25kHz以上が必要
悪化させる要因低周波・深い調光(低デューティ)速いシャッター・スロー撮影・低周波PWM
症状長時間で目の疲れ・頭痛写真/動画に横縞・明滅・色ズレ
現れ方環境を問わず常時撮影したときだけ顕在化(事後クレーム化)

3. 安全なPWM周波数の目安(用途別早見表)

納入先で「どこまで本格的に撮るか」によって必要な周波数が変わります。用途を確認してから電源・調光器を選定してください。

撮影の想定用途必要なPWM周波数の目安備考
撮影を想定しない一般照明200〜500Hz目視優先。ただしSNS撮影で縞リスクは残る
スマホ・SNS用の静止画/30fps動画1kHz以上店舗・美容室・飲食の「映え」用途の最低ライン
商品撮影・物撮り・一眼動画3kHz以上1/250秒程度の速いシャッターでも安定
ライブ配信・スタジオ・テレビ10kHz以上放送・配信での縞混入を回避
スローモーション(120〜240fps)20〜25kHz以上 または 無点滅露光が極端に短い。フリッカーフリー電源推奨

見落としがちな確認: 美容室・アパレル・飲食・ジム・スタジオは「お客様や運営がリール動画を撮る」前提の現場が増えています。設計時に撮影用途のヒアリングがないと、納品後にSNS動画で縞が判明し、電源総取り替えになりがちです。撮影が絡む現場は最初から1kHz以上(できれば3kHz以上)を標準にしておくと安全です。

4. シャッター・フレームレートとの関係(計算)

縞が出るかどうかは「1回の露光(シャッターが開いている時間)に、PWMの点滅が何周期分含まれるか」で大まかに判断できます。含まれる周期数が多いほど明暗が平均化され、縞は目立たなくなります。

1露光あたりのPWM周期数 = PWM周波数(Hz) × シャッター開放時間(秒)
// 例: 1000Hz × (1/100秒) = 10周期 → 平均化されて縞は出にくい
// 例: 1000Hz × (1/2000秒) = 0.5周期 → 1周期に満たず縞が強く出る

目安として、1露光あたり概ね10周期以上含められれば実用上ほぼ縞は気になりません。シャッターが速い(=開放時間が短い)ほど多くの周期を確保するために高い周波数が必要、という関係です。

シャッター速度1kHzでの周期数3kHzでの周期数25kHzでの周期数
1/50秒(通常動画)20周期60周期500周期
1/250秒(明るい屋内)4周期12周期100周期
1/1000秒(高速)1周期3周期25周期
1/4000秒(スロー寄り)0.25周期0.75周期6.25周期

撮影側で逃げる場合の設定

電源を替えられない応急対応では、撮影側のシャッターを商用電源の周波数(東日本50Hz/西日本60Hz)の整数倍に合わせると、蛍光灯由来や一部のLED点滅と同期して縞が軽減することがあります。具体的には東日本=1/50秒・1/100秒、西日本=1/60秒・1/120秒を試します。ただしPWM周波数が商用周波数と無関係な機種では効かないため、根本対策は電源・調光器側の高周波化です。

5. 施工後に縞が出たときの切り分け手順

「撮ると縞が出る」と連絡が来たら、テープを疑う前に電源・調光経路を切り分けます。多くはテープ本体ではなく、調光器または電源のPWM/リップルが原因です。

テープを張り替える前に電源・調光を疑う: 縞の原因の大半は「点滅させている側」=調光器か電源です。テープは点いている間そのまま光るだけなので、張り替えても点滅源が同じなら縞は再発します。切り分けの順序を守れば、内装を壊さずに電源・調光器の交換だけで直せるケースがほとんどです。

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用途に合った周波数・調光方式で選べます。

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6. フリッカーフリー電源・高周波調光の選定

撮影が絡む現場は、調光方式と電源のリップルの両方を押さえます。調光方式はPWM/CCR(定電流)などの違いを理解した上で、撮影用途には高周波PWMまたは定電流(リニア)系を選ぶのが基本です。

方式・部材撮影適性選定のポイント
高周波PWM調光器(数kHz〜25kHz)良好仕様に「フリッカーフリー」「高周波PWM」「○kHz」の記載があるものを選ぶ
定電流(CCR/リニア)調光最良点滅させず電流を絞るため原理的に縞が出にくい。スロー撮影向き
低周波PWM調光器(〜数百Hz)不可安価だが撮影現場には不向き。SNS動画でも縞が出やすい
フリッカーフリー定電圧電源良好整流リップルが小さい設計(リップル率の低い製品)を選ぶ
安価な汎用定電圧電源注意100/120Hzのリップルが残り、無調光でも縞の原因になることがある
1kHz
SNS撮影の最低ライン
静止画・30fps動画の目安
3kHz
物撮り・一眼動画
速いシャッターでも安定
25kHz
スロー撮影/放送
これ以上 or 無点滅推奨
10周期
1露光あたり目安
含めれば縞はほぼ消える

関連するトラブル対処・選定ガイド

7. 選定・確認チェックリスト

8. よくある質問

目では見えないのに、なぜスマホで撮るとLED照明に横縞が出るのですか?
LEDテープの多くはPWM(パルス幅変調)で明るさを制御しており、目に見えない速さで点滅しています。人の目は残像でなめらかに見えますが、カメラのCMOSセンサーは画面を上から下へ一行ずつ読み取る「ローリングシャッター」方式のため、行ごとに点灯・消灯のタイミングがずれて記録され、明暗の横縞(フリッカーバンディング)として写ります。点滅周波数が低いほど、またシャッター速度が速いほど縞が目立ちます。
撮影しても縞が出ないLEDテープにするには、PWM周波数は何Hz以上を選べばよいですか?
通常の写真・30fps動画なら1kHz以上、できれば3kHz以上を目安にすると実用上ほぼ縞が出ません。スローモーション撮影(120〜240fps)や1/1000秒級の高速シャッターを使う撮影スタジオ・配信現場では、露光時間が短く1周期に満たないため、20〜25kHz以上の高周波PWM、または点滅しないフリッカーフリー(リニア/定電流)電源を選んでください。納入先に撮影用途があるかを事前に確認するのが安全です。
施工後に横縞が出ると言われました。テープを張り替えずに直せますか?
縞は多くの場合テープ本体ではなく電源・調光器側のPWM周波数が原因です。まず調光器を100%(全点灯・無調光)にして縞が消えるか確認します。消えるなら調光器のPWMが原因なので、高周波PWMタイプやフリッカーフリー対応の調光器・電源に交換すれば、テープを張り替えずに改善できます。100%でも縞が残る場合は、フリッカーフリー(リップルの少ない)定電圧電源に交換します。撮影側で対処するなら、シャッター速度を電源周波数に合わせて1/50秒(西日本は1/60秒)に設定する方法もあります。