マンション共用部の照度基準ガイド|廊下・エントランス・駐車場のLED選定と省エネ提案

「管理組合から照度基準を求められたが、JIS値がわからない」「蛍光灯をLEDに替えたら廊下が暗いとクレームが来た」——マンション共用部のLED工事で施工業者がはまりやすいのは照度不足とIP等級の選定ミスです。JIS Z 9110の区域別推奨照度・LED選定の確認ポイント・管理組合向け省エネ試算の手順を実務データとともに整理します。

JIS Z 9110 マンション共用部の照度基準一覧

JIS Z 9110(照度基準総則)は建物の用途・作業種別に応じた「推奨照度(lx)」を定める日本産業規格です。マンション共用部に直接適用される独立規格はないため、JIS Z 9110(住宅・集合住宅の共用部)とJIS A 3302(住宅の各部)を組み合わせて参照します。以下の数値は「維持照度」(経年劣化後も確保すべき最低値)を想定した実務上の目安です。

区域 推奨照度(維持照度) 実務上の補足
エントランスホール(屋内) 200 lx 防犯カメラの撮像品質・来訪者の顔認証にも影響
廊下・通路(居住階) 50 lx 安全・防犯を重視する場合は75〜100 lx推奨
階段(踏み面) 75 lx 踏み面を均一に照らし、段鼻部を明確に視認できること
エレベーターホール 100 lx 呼び出しボタン周辺は局部照明を追加
集会室・管理室 300 lx 書類確認・会議を想定。作業面での照度確保が必要
屋内駐車場(通路) 75 lx 防犯・ナンバープレートの識別を考慮
屋内駐車場(駐車スペース) 30 lx ドア開閉・荷物の出し入れが安全に行える最低照度
屋外エントランス・アプローチ 50 lx 防犯灯との連携で確保。夜間の顔識別に100 lx推奨
ゴミ置き場・物置 30 lx 作業時のみ点灯するセンサー対応で省エネ可
機械室・電気室(点検時) 200 lx 高圧機器周辺は影ができにくい均一照度設計が必要

上表は実務的な推奨値をまとめたものです。建物の設計仕様書や管理組合の要求仕様が優先されます。省エネ補助金(経産省・各自治体)を申請する場合は、申請要件に照度基準の記載があることがあるため、申請前に必ず確認してください。

区域別のLED選定ポイント(IP等級・色温度・センサー)

廊下・階段

居住階廊下の最大の課題は「夜間の省エネ」と「安全照度の確保」の両立です。人感センサー(PIR)付きダウンライトまたはベースライトを選定し、在室時75 lx・非在室時15〜20 lxの2段階調光が標準的な仕様です。非常用照明(バッテリー内蔵型)との回路分離も必ず確認してください。色温度は4000〜5000 K(白色系)が廊下・階段では視認性が高く、高齢者居住比率が高い物件では演色性Ra80以上を指定する管理組合も増えています。

エントランスホール

エントランスは第一印象を決める空間であり、演色性Ra80以上・色温度3000〜4000 Kで上質な印象を演出する物件が多いです。防犯カメラのナイトビジョン性能と照度バランスを確認し、カメラの感度に合わせた照度設計が必要な場合があります。屋内エントランスはIP40以上、風除室(雨の侵入がある扉直近)はIP44以上を選定してください。

屋内・地下駐車場

駐車場は天井高が低く(2.2〜2.5 m)、既存が蛍光灯40W管×2や水銀灯の場合が多いです。LED直付けベースライトまたは防塵型LEDに交換します。

駐車場タイプ 推奨IP等級 推奨光源 センサー
屋内平置き駐車場 IP44以上 LED直付けベースライト 40W相当 人感センサー(省エネ)
地下駐車場(換気あり) IP54以上 防湿型LEDベースライト 常時点灯(防犯)
機械式駐車場(ピット内) IP65以上 防水防塵型LED作業灯 常時点灯
屋外開放型駐車場 IP65以上 屋外用LEDポール灯・投光器 タイマー+センサー

蛍光灯・HIDからLEDへの交換時の照度確認方法

既存蛍光灯をLEDに置き換えるときに「照度が下がった」とクレームになる主な原因は次の3つです。

  1. 光束(ルーメン)を確認せず型番だけで選定した — 「FLR40W型⇒LED40W相当」でも製品によって光束が1,800〜3,500 lmと大きく異なります。
  2. 照射角の違いを無視した — 蛍光灯は360°配光、LEDチューブは片側120°または全周配光が混在します。反射板付き器具では全周配光型が必要です。
  3. 保守率を低く見積もった — 蛍光灯の保守率は0.70〜0.75、LEDは0.80前後。初期照度が同等でも数年後の維持照度差が出ます。

簡易照度計算式(概算確認用)

計算式の変数 内容 マンション廊下の目安
E(平均照度 lx) E = F × N × U × M ÷ A 目標:50〜100 lx
F(光束 lm) 製品カタログの全光束値 LEDダウンライト:700〜1,200 lm/台
N(灯数) 設置台数 2.4 m幅廊下:2.5〜3 m間隔が目安
U(照明率) 室指数から配光表で取得 廊下(室指数0.6〜0.8):0.45〜0.55
M(保守率) LED:0.80 / 蛍光灯:0.72目安
A(床面積 m²) 照明対象面積 1スパン:幅2.4 m × 奥行3 m = 7.2 m²

廊下のように細長い空間は室指数が低く(0.6〜0.8程度)照明率が低め(0.45〜0.55)になりやすいため、同じルーメン数でも広い部屋より照度が出にくいです。廊下長さ÷天井高の比が大きい場合は灯数を増やすか高光束型を選定してください。

管理組合向け省エネ提案の試算フォーマット

マンション管理組合は長期修繕計画との整合を確認しながらLED化を判断します。以下のフォーマットで試算を提示すると承認が取りやすくなります。

試算項目 蛍光灯(現状) LED(提案)
設置台数 __ 台 __ 台
1台あたり消費電力 __ W __ W
合計消費電力 __ W __ W
年間点灯時間 センサーなし常時点灯:8,760 h / センサーあり(在室率15%):1,314 h
年間電力量 __ kWh __ kWh
電力単価(目安) 管理組合の実績単価(または目安31円/kWh)
年間電気代 __ 円 __ 円
年間削減額 __ 円(削減率 __%)
工事費込み初期投資 __ 円
投資回収年数 __ 年(初期投資 ÷ 年間削減額)

廊下・共用部の点灯時間は人感センサーの有無で大きく変わります。センサーなし(常時点灯):8,760 h/年、センサーあり(在室率10〜20%の場合):900〜1,750 h/年が計算上の目安です。深夜は低調光(15〜30 lx相当)に落とすゾーン調光設計と組み合わせると、さらに電力削減効果が高まります。

省エネ補助金(経産省・各自治体)を活用する場合は補助率・上限額を確認し、補助金適用後の実質回収年数を試算に加えると管理組合の承認が得やすくなります。

LEDテープライトを共用部で活用できる場面

LEDテープライトは主照明の補助として意匠性を高める用途で共用部に採用されています。以下の場面で実績があります。

  • エントランス足元ライン:サッシ下や床と壁の見切り部に間接照明を仕込み、深夜の誘導灯代わりに10〜20%調光で常時点灯。防水IP65以上のシリコンカバー型テープが適合します。
  • エレベーターホール天井廻縁:アルミフレームにCOBテープを収めてトップライト形状の間接照明を演出。色温度3000 Kで高級感を出す設計が人気です。
  • 集会室のブラケット補助照明:壁面の見切り材にLEDテープを仕込み、演色性Ra90のテープでメイン照明のグレアを補完します。
  • 駐車場の誘導ライン:通路端に低輝度(100〜200 lm/m)のLEDテープを設置して夜間の車両誘導に使用。アルミ押し出しフレームに収めると踏みつけ対策になります。

いずれの場合も主照明回路とLEDテープ回路を分けて、テープの故障が主照明に影響しない配線設計が基本です。

よくある質問(FAQ)

Q. マンション共用部の廊下に必要な照度は何lxですか?

JIS Z 9110の推奨照度はマンション廊下で50 lxです。防犯・高齢者の安全を考慮して75〜100 lxを確保する物件が増えています。人感センサーと組み合わせ、非在室時は15〜30 lxに落として省エネと安全を両立する設計が一般的です。

Q. 共用部のLED照明に防水等級(IP)は必要ですか?

屋内廊下・エレベーターホールはIP20〜IP40程度で通常問題ありません。地下・機械式駐車場はIP44以上、屋外エントランス・アプローチはIP65以上が推奨です。清掃時に高圧洗浄を行う箇所はIP54以上を選定してください。

Q. 管理組合への省エネ提案で投資回収年数はどう計算しますか?

削減W数 × 年間点灯時間(h)÷ 1,000 で年間削減電力量(kWh)を算出し、電気料金単価(実績値または目安31円/kWh)を掛けて年間削減額を出します。投資回収年数=工事費込み初期投資 ÷ 年間削減額です。人感センサーを追加する場合は点灯時間を在室率10〜20%で計算してください。

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